ボードゲーム『聖杯サクセション』レビュー

悩みどころたっぷりの2人用ゲームの傑作!

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我が家で稼働率断トツのナンバー1。「大気圏内ゲームズ」さんによる2人用カードゲーム『聖杯サクセション』は、まるで偶然の産物ではないかと疑いたくなるほどの完成度の高さ。これを考えた人は天才に違いない! というわけで、『聖杯サクセション』レビューです。

ゲーム概要

2人専用カードゲーム。プレイ時間15〜20分。

手札から1枚を2人共通の列に出して並べるか、列に並んだカードを各ラウンドに1度だけ5枚まとめて獲得するか、どちらかを選択していき、4ラウンド終了後に獲得しているカードの点数の高さを競う。

どのカードを出すかの選択と、いつカードを取るかのタイミングのみで勝敗を決する。

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カードの内訳

↓ 5が5枚/6が6枚/7が7枚/8が8枚

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↓ マイナス点のカードが計7枚/プラス点のカードが計9枚
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↓ 聖杯カードが3枚
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ゲームの準備

1、全45枚のカードのうち、表を見ずに3枚を取り除く(今回のゲームでは使用しない)

2、42枚のカードから裏向きのまま両プレイヤーに5枚ずつ配り、残ったカードは山札にして置く

3、山札から2枚をオープンし、山札の横に並べて列をつくる

↓ 準備完了

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手番にできること

以下の2つのうち、どちらか1つを選択して実行する。

1、手札から任意の1枚を出し、列の端(山札から遠い方)に並べる

2、列の端から5枚(5枚ない場合はあるだけ全部)をまとめて獲得する。獲得したカードは自分の前に並べておき、これがゲーム終了時の得点となる。この「2」は各ラウンドに1度しか実行できない。

↓ 列が下図の状態で「2」を選択した場合、「8/7/-3/5/7」を獲得する
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ラウンド終了条件と次のラウンドの準備

上記「1」か「2」を先手番から交互に実行していき、両プレイヤーとも「2」を1度ずつ実行し、かつ手札を列に出し切れば1ラウンド終了。

場に残っている列はそのまま引き継ぎ、改めて山札から5枚ずつカードを配って新たな手札とし、先手番を交替して次のラウンドへ進む。

ゲーム終了条件

以下のどちらか

A:聖杯カードを1人で3枚すべて獲得する(=聖杯サクセション)

B:4ラウンドが終了する

勝敗

上記「A」の場合、即座にゲームは終了し、3枚揃えたプレイヤーが勝利する。

上記「B」の場合、獲得したカードの得点計算を行う。

計算方法は以下の通り。

・「5、6、7、8」それぞれのカードを多く獲得しているプレイヤーが、そのカードの数字分の得点を得る(例:6と8を多く持っていると6+8=14点)

・「5、6、7、8」の4枚の組み合わせ1セットごとに5点

・「プラス点、マイナス点」のカードは、そのまま得点に加減する

・「聖杯カード」は得点にはならない

ここが凄い

・圧倒的なジレンマ

お互いが取ることになるカードは、全てお互いの手札の中にある。それらは場に出さない限り自分で取れない(=相手にも取られない)。欲しいカードを出せば取られるリスクがある、しかし出さないと自分でも取ることができない。出せば相手に取られる、しかしまだ「取る」選択肢は使いたくない。要らないカードを相手に取らせたい、しかしここで出せば逆に取らされる可能性もある……そんな一手一手のジレンマを、どのカードをいつ出すかという「選択」と「タイミング」だけで生み出しているのが凄い。

・濃密な駆け引き

相手に自分より先に「取る」選択肢を使わせるためのカードの出し方、また逆に、相手に先に取らせないようにするための出し方を、自分の手札の状況、相手の手札の予想、両者のカードの獲得状況を考えたうえで組み立ててゆく。お互いがジレンマを解消しようとする戦略のぶつかり合いが熱い。

・聖杯の存在

聖杯は3枚揃えると即座にゲームが終了するカードなので、相手に1枚でも渡れば基本的に不利になる。即効性のある聖杯の存在によって、上に書いたような駆け引きの緊迫感が倍増。しかも、ゲームの初めにカードを取り除くことによって、そもそも聖杯が3枚入っていない可能性もある。「相手の残りの手札に聖杯があるとマズい…」など、“聖杯の気配”だけでプレイに影響を及ぼすのが凄い。

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・手番順の妙

このゲームは、先手か後手かによって優先すべき行動が変わる。例えば、手札の中に相手に取られたくない1枚がある場合、自分が後手だったら、最後まで持っていれば絶対に取られない。どっちの手番順の時に聖杯を持っているかという1点だけでもカードの出し方が大きく変わってくる。毎ラウンド手番順が交替するというだけでこれほどの効果をもたらしているゲームは他に知らない。

・そんなこと考えなくても遊べてしまう懐の深さ

ここまで書いてきたような駆け引きや戦略性もめっぽう面白いけど、それらをあまり意識せずとも遊べてしまうのが素晴らしいところ。深く考えなくても、すぐに「あ、これはいい感じ」とか「これはやばいな」とかがピンとくる。そして、気づけばのめり込んでいる(はず)。

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文字ではなかなか魅力を伝えられないけれど、シンプルかつ深みのある2人用のゲームを探している方には強くお勧め。

あえて難点を挙げれば、カードの質がさほど良くないことと、スリーブに入れると箱に収まらないこと。ボロボロになった時のために、我が家には予備も置いてあります。

それくらい好き。

★9

 

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