映画『ヘレディタリー/継承』感想

※ネタバレがあります※

 


 

「今年(2018年)最も怖い!」「今世紀最恐!」等々、評判が聞こえてきていたホラー映画『ヘレディタリー/継承』をようやく観ました。その感想。

 

率直に言うと、怖さという点ではまったく肩透かし。ショッキングなシーンがたまに挟まれる、基本的には地味なカルト映画でした。

まぁ、いろんなホラー映画から影響を受けた、そして意匠を凝らした映画だってのは分からなくはない。監督さんはそれなりに力のある人なんだなと。

でも、ある一家族の悲劇にスポットを当てて、何を感じさせたかったのか、よく分からない。

家族の不幸の先に何があるのか、それを見たかった。

人里離れた場所に新興宗教を立ち上げました……という程度に収束してしまっているのが残念。

 

ホラー映画って、戦いの映画だと思うんです。肉体的な意味だけじゃなく。

名状しがたきものに人間が人間であることを懸けて立ち向かう戦いの映画。

その、戦わなければならない状況に恐怖があり、哀しみがあり、戦い終えた後の解放がある。

でも『ヘレディタリー』に、戦いはなかった。不気味な場面が序盤から続き、しかしそれしかなかった。そして最後は邪教(悪魔)に乗っ取られて終わる。

やられ放題、無抵抗、寝てるだけ。

ガブリエル・バーン(executive producer)はなにやってんだ。十字架持って戦えよ!お前が燃えてんなよ! と思わざるをえない。

 

また、トニ・コレット(executive producer)の演技が大絶賛されていて、確かに凄かったけど、ホラー映画で役者が目立つのは全然褒められたことじゃない。「あれ、あの映画って誰が出てたっけ」くらいの方がいい。人じゃなくて世界が怖くあるべきだ。

 

それにしても、「『回転』『エクソシスト』『ローズマリーの赤ちゃん』…正統派ホラーの系譜を継ぐ…!」云々、評論家も好き勝手なこと言うなぁと。(まぁ『回転』はともかくとして)

全然違いますよ。表面だけ見て言うなよ。

 

50年後、この映画を覚えている人はほとんどいないでしょうね。(しらんけど)

でも監督アリ・アスターの次作『Midsommar』もカルト映画なようで、その路線で突き進むならそれはそれで面白い。

★3